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アイデア発想に困ったら? 商品・サービスを差別化する体験設計と人の心を動かすアイデアのつくり方
- CXデザイン
アイデア発想には、才能や閃きが必要だと考えていませんか。
実は、ビジネスを成功へ導く魅力的なアイデアは、適切なプロセスを学び実践することで、誰でも創出できるようになります。
そこで本記事では、優れた体験設計の創出に欠かせないアイデア発想について解説します。前半の1~2章は、アイデア発想を妨げる要因と代表的なテクニックとしてフローやアイデア出しに役立つフレームワークを紹介。そして、後半の3章以降は、人の心を動かすアイデアを生み出すヒントとアイデア発想を体験設計につなげるための手法について、具体事例も交えて紹介します。
本記事が、新たなアイデア創出のヒントとなり、ビジネス成長の一助となれば幸いです。
1.なぜ、アイデアは生まれにくいのか
アイデア発想は、ビジネスの観点で捉えると、新規事業や商品開発に必要な顧客体験(CX)やユーザー体験(UX)の向上に加え、競合との差別化を実現する重要なプロセスです。しかし、ビジネスに役立つ魅力的なアイデアはそう簡単には生まれないと感じている方も多いのではないでしょうか。
アイデア発想は、一部の特別な人だけができる技だと思われがちです。
ところが、発想を妨げる要因を理解し、一定のやり方や経験を積めば、アイデアは生まれやすくなります(とはいえ、一朝一夕で身につくものではないのですが…)。
ここでは、アイデアが生まれにくくなる要因と、アイデアが生まれやすい場づくりについて解説します。
1-1:アイデアが生まれにくくなる要因
アイデアが生まれにくくなる主な要因は、以下の3点です。
・固定観念
過去の経験によって形成された固定観念や先入観にとらわれると、無意識のうちに柔軟な思考や新しい視点で考えることが難しくなり、自由な発想を妨げます。
・否定的な意見(批判)
自分が出したアイデアに対して、上司や同僚などから否定的な意見や批判を受けると、心理的なプレッシャーが生まれ、アイデアが生まれにくくなります。
・知識不足
アイデアの材料となる知識が不足している場合も、発想が生まれにくくなります。
既存の知識だけに頼り、新しい知識のインプットを怠ると、アイデアがマンネリ化しがちです。
新規事業やサービス改善に必要な創造的なアイデアは、多くの人が無意識にとらわれている思考の壁や、他者からの影響、そして知識不足といった様々な要因により大きく左右されます。
魅力的なアイデアを生み出すためには、こうした障壁を取り除くことが重要です。
1-2:アイデアが生まれやすい場づくりとは
そのため企業には、前述した「アイデアが生まれにくくなる要因」を踏まえて、誰もが最大限に力を発揮できる場を整えることが求められます。では、どのような体制をつくると良いのでしょうか。
アイデア発想のコツは、アイデアが生まれやすくなる場づくりが非常に重要です。ここでは、アイデアが生まれやすくなる場づくりのポイントを以下にまとめました。
・否定しない
アイデアを否定されると、萎縮してしまい、積極的に発言をしにくくなります。
どんな突飛な意見でも歓迎する姿勢を示すことで、アイデアが思いつきやすくなります。
・質を問わない
アイデアの量が多いほど新しい発想につながる可能性が高まります。
そのため、アイデアの良し悪しにこだわらず、まずは多くのアイデアを出すことを重視します。
・アイデアを発展させる
アイデアが出たら、一つひとつのアイデアをもとに発想を広げます。
複数のアイデアや意見を組み合わせて発展させることで、斬新なアイデアが生まれやすくなります。
このように、すべての意見を尊重するルールや失敗を受け入れる仕組みをつくることにより、心理的安全性が確保され、自身の考えを発言しやすくしてくれます。
なお、この「場づくり」の考え方は、チームだけではなく個人でアイデア発想を行なう場合にも当てはまります。一人でアイデアを考えていると、意識的にも無意識的にも「こんなことは無理だからやめよう」「こんなことを言ったら笑われてしまう」と、自らアイデアの可能性を閉ざしてしまいがちだからです。
これらのポイントを意識することで、一人でもチームでもアイデアの量が増え、創造性の高い発想が生まれやすくなります。
2.代表的なアイデア発想のテクニック
次に、代表的なアイデア発想のテクニックを紹介します。
アイデア発想のポイントは、まずアイデアの量産を優先し、評価を後回しにして質より量にこだわることです。最初から質にこだわってしまうと、アイデア発想の妨げなにります。アイデアを一度出し切ってから評価することで、発想の芽を摘まずに済み、魅力的なアイデアが生まれやすくなります。
ここでは、アイデア発想の基本的な流れを解説したうえで、アイデアを生み出す「発散」と、アイデアを評価・分類してまとめる「整理」の2つに分けて解説します。
2-1:アイデア発想のフロー
まず、アイデア発想のフローに決まった型があるわけではありません。
ただし、次の3つのステップを踏むことで、目的に沿ったアイデアが生まれやすくなります。
- STEP 1: ゴール・目的設定
- STEP 2: 発散
- STEP 3: 整理・収束
この3つのステップの中でも、まず重要となるのが、ゴール・目的を明確に設定することです。ゴールが明確であるほど、目標達成に向けた道筋がはっきりし、解決策の方向性が定まりやすくなります。ゴール・目的を設定する際には、実現したい状態を数値や評価基準として具体化できるとベストです。
ゴールの認識がずれていると、そもそも解決したい課題とは異なる方向にアイデアが進んでしまうリスクが高まります。例えば、一つの課題に対するゴールの認識が大きく食い違っている場合、期待した成果とは大きくかけ離れてしまったり、かえって状況を悪化させたりする可能性すらあります。
また、チームでアイデアを考える際は、ゴールを全体に共有することが不可欠です。ミーティングをしながら、さまざまな会話をしていると「そもそも何を目指していたのか」が曖昧になり、全く別の話題に逸れてしまうことは珍しくありません。
あらかじめゴールを設定し共有しておくことで、必要に応じて原点に立ち返り、軌道修正をすることができるようになります。
2-2:アイデアを発散する方法
ここでは、アイデアを発散に役立つ、代表的なフレームワークや手法をご紹介します。
・SCAMPER法
7つの視点から新しいアイデアを生み出す手法で、短時間で多くのアイデアを生み出せるのがメリットです。
以下の7つの切り口から発想を広げます。
- ‐ Substitute(代用)
- ‐ Combine(組み合わせ)
- ‐ Adapt(適応)
- ‐ Modify(修正)
- ‐ Put to other uses(他用途)
- ‐ Eliminate(削減)
- ‐ Reverse/Rearrange(再構成)
・ビジネスモデルキャンバス
ビジネス構造を可視化する手法です。
9つの要素(顧客セグメント・価値提案・チャネル・顧客との関係・収益の流れ・リソース・主な活動・主なパートナー・コスト構造)に分解することで、アイデアの整理や検証が容易になります。
ビジネス全体を俯瞰できるため、改善点の抽出にも有効です。
・マンダラート
3×3の9マスにアイデアを書き込んでいく手法です。
中心にテーマを配置し、関連するアイデアを周りの8マスに記入します。連想が広がりやすく、新しいアイデアが生まれやすくなります。
・ブレインストーミング(ブレスト)
創造的な発想を促進させる手法です。
個人または複数人で設定したテーマに沿って自由に意見を出し合い、最後にアイデアを絞り込みます。短時間で大量のアイデアを集めることができ、チームの結束力強化にもつながります。
このように、アイデア出しに役立つ発散させるフレームワークや手法を取り入れることで、アイデアの量産と思考の拡張につながります。さらに、これらを実践することにより、多角的な視点を持てるようになり、アイデア創出力を高めることができます。
単にアイデアを出すだけではなく、一つの目的に向けて深く思考することで、さまざまな角度からビジネスを見直すきっかけとなり、新たな課題発見やビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
2-3:アイデアを整理・収束する方法
次に、発散したアイデアは、整理・収束させる必要があります。
ここでは、発散だけではなく、グルーピングや評価を行える代表的な手法をご紹介します。
・KJ法
1枚の付箋(カード)ごとに1つのアイデアを書き出し、付箋を分類してグルーピングしたり、関係性を図で示したりしてアイデアを整理します。
最終的に文章化するため、アイデアを直感的にも論理的にも理解しやすくなり、新たな課題の発見につながります。
・ロジックツリー
ブレインストーミングなどで大量に発散させたアイデアを、論理的に分類・整理する際に役立つ手法です。
アイデアや事象をツリー状に分解・構造化し、上位概念から下位概念へ整理していくことで、アイデアの抜け漏れや重複(MECE)をチェックし、全体像を体系的に把握できます。
・PMI法
SCAMPER法やブレインストーミングなどで出した多様なアイデアを、多角的な視点で評価・選抜する手法です。
以下の3つの視点で分類します。
- ‐ Plus(良い点)
- ‐ Minus(悪い点)
- ‐ Interesting(興味深い点)
メリット・デメリットだけで判断すると切り捨てられてしまうような、一見非合理だがユニークな「面白いアイデア」を拾い上げやすくなります。
・マトリクス法
縦軸と横軸とに要素を分類し、表形式で整理する手法です。
関連するアイデアのグループ化や、抜け漏れのチェックがしやすく、全体像を客観的に把握できるため、分析の効果が向上します。
アイデアを整理・収束する手法は、新しく量産されたアイデアのグループ化や視覚化、言語化をすることにより、論理的に情報整理するのに役立ちます。
また、手法によっては、全体像を俯瞰できるため、思考の深掘りも可能となり、ビジネスに活かせる創造的なアイデアが生まれやすくなります。
3.アイデア発想を始める前に
人間は必ずしも合理的ではなく、感情や心理に影響を受けて判断をする生き物です。
そのため、合理的な判断や行動に着目したアイデアだけでは、人間の感情の動きに対応できず、顧客が本当に満足する体験設計が難しくなります。
また、安さや利便性といった機能的価値では差別化が難しい現代においては、好きや面白いといった情緒的価値に着目し、顧客が思わず使いたくなる粘着性(ステッキネス)のある体験を作ることが求められます。
ここでは、体験設計におけるアイデア発想を始める前に押さえておきたい、人間の心理について解説します。
3-1:直感で間違えてしまう人間の心理
突然ですが、クイズです。
「バットとボールの合計額が11,000円です。
バットがボールより10,000円高いとき、ボールはいくらになるでしょう?」
この問題を直感的に考えると「1,000円」と答えてしまう方が多いのではないでしょうか。しかし、正しく計算すると、答えは「500円」になります。
このように、人間の直感はしばしば誤った判断を導き出すことがあります。人は経験や先入観に基づいた、無意識の判断や、感情に左右された行動をとることがあるため、必ずしも正しい答えを導き出すとは限りません。
3-2:得よりも損を避けたい人の心理
次は、こちらをご覧ください。
こちらは、八王子市の大腸がん検査キットの案内です。
行政が抱える「大腸がん検査を継続的に受診する人を増やしたい」という課題に対して、A(メリット訴求)とB(ネガティブ訴求)の2パターンでテストを行いました。
A:来年度、大腸がん検査キットをご自宅へお送りします。
B:来年度、ご自宅へ大腸がん検査キットをお送りすることができません。
両方とも検査キット送付に関する内容ですが、結果的としてBのアプローチの方が受診率が7.2%高くなりました。
なぜ、このような結果となったのでしょうか。
その理由は、利益を得るよりも損失を避けたいと感じる「損失回避性」という人間の心理が働いたためです。
人は、得をした喜びよりも損をした苦痛の方が2倍ほど強く感じやすい※とされており、損を回避できるネガティブなメッセージの方がより多く、選ばれやすかったと考えられます。
人間の行動は損失回避性に限らず、さまざまな心理や感情によって影響を受けています。優れたアイデアを生み出すためには、こうした人間の特性を深く理解することが不可欠です。
※出典: Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47(2), 263–291.
4.人の心を動かすアイデアとは
ここまでで、人間の判断は、論理や理性だけではなく、非合理な側面があることをお分かりいただけたかと思います。
顧客に選ばれる企業になる、または顧客に選ばれる製品やサービスを生み出すためには、こうした心理や感情をうまく捉える必要がありそうです。
それでは実際に、顧客の心を動かし、能動的に「ついやってしまう」ようなアイデアを生み出すにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは、人の心を動かすアイデアについて、セガ エックスディー流の考え方を紹介します。
4-1:心を動かす2つの要素
そもそも人の心を動かす「面白いアイデア」の"面白い"とは、どのようなものなのでしょうか。
セガ エックスディーでは、面白いアイデアを「意外性」と「共感性」を同時に兼ね備えたものと捉えています。
“思いつかなかった”という意外性と、“言われてみたら確かにそうだ”という共感性の両方があると、半歩先の「心を動かすアイデア」になると考えています。アイデアは、ただ意外なものであれば、突飛さや異質さから敬遠されてしまう可能性もあります。
一方、ただ共感されるものは、面白いとは感じてもらえず、「へぇ」と思われて終わってしまうかもしれません。このバランスこそが、人にとって面白い・魅力的と感じさせるアイデアであると捉えています。
したがって、アイデア発想で重要なのは、意外性と共感性のバランスです。これら2つの要素を適切に組み合わせることで、人の心を動かし、行動につながるアイデアの創出につなげやすくなります。
4-2:ポジティブに受け入れられるアイデア
次に、セガ エックスディーが心がけている「マイナスをプラスに変えるアプローチ」を紹介します。
プラスのアプローチは、多くの人々に好意的に受け入れられやすく、ビジネスで成果を出すうえでも重要な視点です。それをよく表しているのが、以下の事例です。
<行列による課題の事例>
この事例では、テーマパークの退屈な待ち時間を、アトラクションを待つ人同士が一緒に楽しめるゲームの時間へと変える取り組みが行われました。
一定期間内にゲームでランキング1位になると、行列の先頭に移動できるという特別な体験も付加されています。
これにより、行列というマイナスのつらい体験を、ただゼロへと戻すだけではなく、待ち時間そのものをワクワクするエンタテインメントへと変え、むしろプラスに上回る効果が期待できます。セガ エックスディーでは、このようなプラスの価値を与えて相殺していく考え方を大切にしています。
5.人の心を動かすアイデアを出す新たな切り口
それでは、人の心を動かすアイデアは、具体的にどのように創り出せば良いのでしょうか。
ここでは、人間の本質的な特性を活かしたセガ エックスディー独自のアイデア発想法「原体験アナロジー」と、CXデザインの独自フレームワーク「CXのあいうえお®︎」の2つを解説します。これらの手法を活用することで、誰もが自由に意見を出しやすくなり、人の心理や感情を深く掘り下げながら、優れたアイデアを生み出しやすくなります。
そして、顧客視点の体験設計(CX/UXデザイン)を行い、商品やサービスの差別化にもつなげることができます。
5-1:原体験を一般化しアイデアに変える「原体験アナロジー」
これまで述べてきたように、人間は必ずしも合理的に行動するわけではありません。何らかの意思決定を行う際にも、経験則や先入観に基づいて直感的に判断する「ヒューリスティック」と呼ばれる情報処理の方法が無意識的に用いられます。わかりやすく言い換えると、人は過去の記憶や感情によって瞬間的に物事を判断し、行動する傾向があるということです。
そこでセガ エックスディーは、この誰もが持つ特性を活かすため、幼少期や子どもの頃など過去によりポジティブな原体験を洗い出し、それを基に心を動かすアイデアを創出する「原体験アナロジー」という手法を生み出しました。
原体験アナロジーは、誰もが持つ過去の体験を出発点とするため、特別なスキルや専門知識に依存せず、誰でもユニークなアイデアを生み出すことができる手法です。過去の面白い体験をチームで共有し、そこから意外性と共感性を軸にアイデアを深めることで、精度の高いアイデアを導き出します。
それでは、原体験アナロジーの基本的な4つのステップを紹介します。
STEP1: ポジティブな原体験を洗い出す
参加者それぞれが、幼少期から大人になるまでの中で、心がプラスに動いたポジティブな原体験を自由に書き出します。
(例)
釣りでたくさん魚が釣れて面白かった
STEP2: 共感性の高い原体験をピックアップする
参加者間で共有された原体験の中から、「確かにそれは面白いね」と多くの人が共感できる、共感性の高い原体験を複数選びます。
STEP3: 原体験を深掘りし、感情を一般化する
「何が、なぜ面白かった(楽しかった/嬉しかった)のか」を分析し、根源的な感情に落とし込み、一般化します。
(例)
分析:魚を釣った瞬間よりも、家に帰ってから魚料理にして家族にふるまい、「美味しい」と言われたときが一番嬉しかった
感情の一般化:釣りそのものではなく、「手間ひまかけて大切な人のために作り、相手が喜んでくれる瞬間」が最も嬉しい
STEP4: 一般化した感情を課題に当てはめる
一般化された感情を、解決したい具体的な課題に当てはめることで、面白いアイデアを導き出します。
(例)
一般的な香水は機能的に長持ちする香りが価値とされますが、上記の「手間ひまをかけた贈り物が喜ばれる」という感情を当てはめると、「1日しか香らないが、その香りを作るために手間ひまをかけた特別感を訴求した香水」というアイデアが生まれます。
これは、「香水は長く香るもの」という固定観念を逆手に取り、香る瞬間そのものに情緒的な価値を創造するものです。以上のように、過去の原体験からアイデアが生み出されるプロセスを理解していただけたのではないでしょうか。
原体験アナロジーへの理解を深めていただくため、次の章では具体的な活用事例を紹介します。
5-1-1:事例:「シバケン」企画会議にみるアイデアの生まれ方
ここからは、原体験アナロジーを活用した具体的な事例として、「シバケン」の企画会議を参考に、アイデアが生まれるプロセスを見ていきましょう。
この事例は、縦型ショートドラマ専門の制作チーム「シバケン」が制作するドラマの方向性を検討する会議に、セガ エックスディーが参加し、原体験アナロジーを使ってアイデア発想を実践したものです。
企画テーマを「初恋」に設定し、参加者それぞれの原体験から面白いアイデアを導き出していきました。
まず、グループで今までの人生におけるポジティブな原体験を自由に洗い出したのち、共感性の高い原体験を複数ピックアップします。さらに、原体験を深掘りし、そこに含まれる感情を一般化していきます。
例えば会議では、「小学生の頃に近所の友達と商店街でドロケイをしたのが、スリルを味わえて楽しかった」という誰もが共感できる原体験から、「達成することよりも逃げているとき」が一番楽しく「冒険のようなドキドキやワクワク感」が最も感情を動かす要素として一般化されていました。
そして最後に、一般化された感情を企画テーマである「初恋」に当てはめ、アイデアを具体化します。
会議では、恋の結末を見るだけではなく、ハラハラする恋の駆け引きに視聴者が介入できるという発想を起点に、議論が展開されました。具体的には、視聴者が主人公の運命を「AかBか」で選択するシナリオ分岐や、視聴者の応援ボタンを押すアクションによって、ストーリーや結末が変化するといった、単なる視聴にとどまらず、能動的に参加できるインタラクティブな映像作品など、ユニークなアイデアが複数生まれました。
このように、一見すると初恋とは無関係に見える「ドロケイ」という遊びの原体験が、初恋をテーマにしたアイデア創出へと結びつきました。この事例から、原体験アナロジーが誰でもアイデアを生み出せる効果的な手法であることがお分かりいただけたかと思います。チームや組織におけるアイデア発想にも適しているので、ぜひ取り入れてみてください。
この企画会議により制作されたショートドラマや、企画会議の模様は公開しています。
ご興味のある方は、以下URLよりご参照ください。
● 縦型ショートドラマの監督と主演俳優へのインタビュー(note)
‐セガXDが企画協力した「初恋」をテーマにした縦型ショートドラマの監督と主演俳優にインタビューしました。
● アイディエーション動画(YouTube)
‐【CX School】ドラマの企画案をSEGA XD流アイデア発想法でやってみた
● 本取り組みで制作したドラマ(動画)
‐はじめて言葉を交わした日:https://vt.tiktok.com/ZSasyBv2m/
‐一生大切にするね:https://vt.tiktok.com/ZSasyuQoC/
5-2:アイデアを具現化する「CXのあいうえお®︎」
次に、出されたアイデアを具体的な体験へと落とし込むための手法を紹介します。
これに役立つのが、セガ エックスディーが考案した顧客体験設計のフレームワーク「CXのあいうえお」の一つである「Oボード(ゲームフルデザインボード)」です。
「CXのあいうえお」とは、誰もが最適なプロセスで体験設計(CX/UXデザイン)が行えるよう開発された、5つのフレームワークの総体です。ゲーム開発では、人間の根源的な欲求をベースに体験をデザインします。
「CXのあいうえお」は、この考え方を非ゲーム分野に応用するゲーミフィケーションのアプローチとして体系化し、「ついやりたくなってしまう」ゲームの熱中する力を、CXデザインに活かします。当社では、このゲーミフィケーションを取り入れた体験設計を「ゲームフルデザイン」と呼んでいます。
Oボードは、人間の根源的な欲求を9つに分類し、それぞれにアプローチする101種類の体験デザイン手法を整理したものです。これにより、アイデアを具現化し、人の心を動かす体験設計を可能にします。
「CXのあいうえお」は、心理的な欲求を掘り下げて設計をするため、商品開発、既存サービスの改善、業務フロー改善など、企業のあらゆるシチュエーションで幅広く活用できます。また、各ボードにアイデアを当てはめることで内容を視覚的に把握することができるため、チームでの情報共有もスムーズになります。
「CXのあいうえお」の詳細は、解説記事をご覧ください。
顧客体験を創造する鉄板フレームワーク「CXのあいうえおⓇ」
6.まとめ
本記事では、アイデアが生まれにくい原因とその解決策、そしてアイデアを体験設計に結びつける方法を解説しました。この記事の重要なポイントは以下の通りです。
・非合理性の探求
機能での差別化が難しい現代において、独自の価値を創造するためには、人間の合理的ではない心理や感情の特性を理解し、探求することが鍵となります。
・意外性と共感性の重要性
顧客の行動変容を促すためには、心を動かす「意外性と共感性」を掛け合わせた「面白いアイデア」の創出が重要です。
・新しいアイデア発想手法の活用
心を動かすアイデアを生み出すには、原体験から発想を導く手法や、心理的欲求に基づいたフレームワークを活用することが効果的です。
人の心を動かすアイデアは、顧客が「面白い」「楽しい」と能動的に関わりたくなる魅力的な体験設計へとつながります・アイデア発想を単なる“アイデア出し”で終わらせず、常に体験設計をゴールとして見据えておくことが重要です。
この記事が、アイデア発想への理解を深めるきっかけとなり、皆さまの新たなアイデアを生み出すためのヒントとなれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事の内容について詳しく聞きたい方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
※記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。