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なぜ課題解決策は機能しない?人間の欲求を起点に考える課題解決のアプローチとは

課題解決に取り組んだ経験のある方の中には、思い通りに機能せず、もどかしい思いをした方も多いのではないでしょうか。理論上は正しいはずの計画や解決策であっても、期待した成果が得られないケースは少なくありません。

そこで本記事では、事業の持続的な成長に欠かせない「課題解決」について、解決策が機能しない本質的な理由を探ります。特に鍵となるのは「課題設定」です。一般的なプロセスを押さえたうえで、近年注目される顧客体験(CX)、ユーザー体験(UX)、従業員体験(EX)といった体験設計・体験構築における課題設定の実践的アプローチを解説します。

さらに、人間の欲求を起点とした課題解決のアプローチとして、ゲームの仕組みを応用した「ゲーミフィケーション」の活用法についても掘り下げます。
本記事が、解決すべき本質的な課題を見極め、ビジネスを成功へと導く一助となれば幸いです。

1.なぜ、正しいと思っていた課題解決策が機能しないのか

ビジネスにおける課題解決は、収益改善や成長機会の拡大だけではなく、持続可能な事業基盤の構築にもつながる重要なプロセスです。
しかし、基本的な手順に従って計画したはずの解決策が、実行してみると期待通りに機能しなかったという経験をお持ちの方も少なくないのではないかと思います。

では、なぜ「正しいはず」の解決策が、思い通りに成果を上げられないのでしょうか。

本章では、課題解決策が機能しない主な要因について、企業が陥りがちな落とし穴に焦点を当てて解説します。
その要因の一つとして考えられるのが、解決策を考える以前の段階、すなわち課題設定そのものに問題があるということです。課題設定を見直すことで、根本的な解決への道筋が見えてくるかもしれません。



1-1:課題解決における落とし穴

ビジネスにおける課題解決では、多くの場合フレームワークが活用されます。
課題を明確化する「ロジックツリー」、本質を掘り下げる「SWOT分析」、顧客体験を可視化する「カスタマージャーニー」、ターゲットを具体化する「ペルソナ」など、目的に応じた多様な手法が存在します。

しかし、フレームワークに依存しすぎると「手段の目的化」に陥る危険があります。枠を埋めること自体が目的化してしまい、本来重要であるはずの「本質理解」が疎かになる恐れがあります。
例えば、ペルソナ設計において顧客の実態を反映できず、企業に都合のよいユーザー像を描いてしまったり、現実には存在しない的外れなターゲットを設定してしまうケースがあります。
ただ、ここで注意しなくてはいけないのは、そもそも最初から顧客の実態を無視しようとしているわけではないという点です。

目的が曖昧なまま「とりあえずペルソナを作る」といった形式的な運用をしてしまったり、担当者の先入観や上司の意見に影響され、ユーザー理解が歪められてしまうことなどが原因となり得ます。その結果、「ユーザー目線」を意識しているつもりでも、実際のユーザー像とかけ離れてしまうことは珍しくありません。

このように、手段と目的を混同したり、企業目線に偏って本質理解が欠落している場合、課題解決を目指したはずが改善につながらないことは少なくありません。最悪の場合、状況をさらに悪化させてしまう可能性すらあるため注意が必要です。



2.課題解決とは

ここまでで、課題解決がうまくいかない要因について探ってきました。では、そもそも「課題解決」とは何を指すのでしょうか。
ここでは、課題解決とは何かを明確にしたうえで、基本的な課題設定のプロセスをご紹介します。



2-1:課題解決とは何か

最初に、質問です。
「日本の課題は何ですか?」と聞かれたとき、あなたはどのように答えるでしょうか。

「少子高齢化」や「実質賃金の低下」など、さまざまな答えが思い浮かんだかもしれません。
しかし、厳密に言うと、このやり取りには誤りがあります(すでにお気づきの方は、この章を読み飛ばしていただいて構いません)。

「課題解決」を理解するためには、まず「問題」と「課題」の違いを整理しておく必要があります。

問題とは
 ・ 現状とあるべき姿(目標/目的)とのギャップ
 ・ 起きている不都合や望ましくない状態

課題とは
 ・ あるべき姿とのギャップを解消(問題解決)するために取り組むべきテーマ
 ・ 「何に取り組むのか」を明確にしたもの


ここまで読んでいただければ、先ほどの「日本の課題」という問いに含まれる誤りにお気づきではないでしょうか。
問題は「現状とあるべき姿とのギャップ」であり、課題は「そのギャップを解消するためのテーマ」です。

したがって、この問いに正しく答えるのであれば、「少子高齢化への対応」「子育て支援」など、取り組むべきテーマを語るのが本来の形です。
実際、ビジネスの現場でも同様、問題と課題が混同され、十分に使い分けられていないケースは少なくありません。
少し脇道にそれたように思う方もいるかもしれませんが、ここで強調したいのは、まず適切な問題を発見してこそ、取り組むべき課題を設定できるという点です。

これを踏まえると、「課題解決」とは次の一連のプロセスを意味すると言えます。

 1. 問題(現状とあるべき姿とのギャップ)を発見する
 2. 本質的に取り組むべき課題を設定する
 3. 課題を解決するための手段・施策を実行する



2-2:課題設定の基本的なプロセス

上記の通り、課題解決とは、取り組むべき課題を設定し、解決に導くプロセス全体を指します。
では、課題解決のために必要な「課題設定」の基本的なプロセスとは何でしょうか。
ここでは、5つのステップをご紹介します。


1. 問題の発見

まず最初のステップは、現状とあるべき姿のギャップを「問題」として把握することです。
ビジネスの現場に存在するさまざまな事実やデータをもとに、「どこに不都合があるのか」を明確にします。
ここでは、「AS IS/TO BE分析」が役立ちます。現在自社がどのような状態にあるのか、本来目指すべき理想の姿は何かを可視化することで、ギャップを明確に定義できます。
例えば、「売上の伸び悩み」や「顧客離れが進んでいる」といった点が問題として挙げられます。


2. 問題の構造化・原因分析

次に、発見した問題をより深く理解するための「構造化」と「原因分析」です。
どのような要素で構成されているのか問題を分解して整理し、なぜその問題が発生しているのかを特定します。
このステップでは以下のフレームワークが活用できます。

・ロジックツリー
問題の要素と原因を階層ごとに分解し、構造の全体像を視覚的に整理することができます
・特性要因図
問題の要素を関連性ごとに体系的にまとめたもので、さまざまな角度から原因を洗い出すことができます

5Whys
問題に対して「なぜ?」という問いを最低5回は繰り返しおこない、根本的な原因を明らかにします

例えば「顧客離れ」が問題であれば、商品力不足、競合との差別化不足、顧客体験の低下などの原因を突き止めます。


3. 課題の抽出

特定した複数の要因の中から、「ビジネスインパクトの大きさ」「自社での実現可能性」などを基準に優先順位をつけ、最も取り組むべき重要なポイントを抽出します。
例えば、「新規顧客の獲得」と「既存顧客満足度の改善」が候補としてあがった場合、新規顧客獲得コスト高さや、顧客のリピート率の低さなどの企業の状況を考慮した結果、現状の資産である既存顧客を最大限に活かした方がインパクトが大きく実現可能性も高いと見極めたとき、「既存顧客満足度の改善」を優先すべきと判断します。


4. 課題の設定(具体化)

抽出した課題を、誰が読んでも理解できるように具体的な表現へと落とし込みます。「誰が・何を・どのように改善するのか」を明確にすることが重要です。そうすることで、関係者間で共通理解が生まれ、認識のズレを防ぐことができます。
例えば、課題を「顧客満足度向上のためのアフターサービス強化」と設定した場合、「誰が(商品購入から1ヵ月以内の顧客)」、「何を(商品の活用方法)」、「どのように(学習を自発的に促す仕組み)」といった形で具体化すると、関係者間の理解がより深まり、認識のズレも解消します。


5. 目標と指標の明確化

最後に、課題解決の成否を判断するための目標(KGI)と指標(KPI)を設定します。
このとき、「SMARTの法則」を活用すると、以下の5要素を満たした明確な目標設定ができます。

・ Specific(具体的な)
・ Measurable(測定可能な)
・ Achievable(達成可能な)
・ Relevant(関連性がある)
・ Time-bound(期限付きの)

例えば、目標が「既存顧客の年間売上を1,000万円増加する」としたとき、「顧客アンケート満足度を半年で80%以上に引き上げる」や「半年間継続利用する顧客比率を65%まで引き上げる」といった具体的な指標へと落とし込むことができます。



3.人間の欲求を起点にした「課題解決」のアプローチ

前述では、「フレームワークに依存することの危険性」「適切な問題発見および課題設定の重要性」、そして「課題設定の基本プロセス」について触れてきました。
ここまで記事を読んでいただいた方の中には、「フレームワークを使用しない方がよいのか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、それは誤解です。

フレームワークを適切に活用することで、抜け漏れを防ぐチェックリストとして機能し、情報整理を助け、何もない状態では気づけなかった視点を得ることができます。
では、何が問題なのでしょうか。

それは、「課題の本質理解ができていないこと」です。

いくら有用なフレームワークであっても、なんとなく“それっぽい”情報を埋めていくだけでは、その効果を最大限引き出すことはできません。
そのため、多くの専門家は本質理解を探るために、定量調査、デプスインタビュー、ソーシャルリスニングなど多様なアプローチを用いたうえで、体験や施策へと落とし込み実行しています。
当社では、この本質理解を独自に考案した「人間の欲求」を起点に行っています。

ここからは、当社で実践する「人間の欲求」を活用した体験設計(CX/UXデザイン)・体験構築による課題解決のアプローチについて紹介します。



3-1:人間の根源的な欲求を起点に体験設計を行う

まずは、当社で定義する「人間の根源的な9つの欲求」をご紹介しましょう。

9つの欲求とは

「9つの欲求」とは、セガ エックスディーがゲームをはじめとするエンタテインメント分野で培った経験則から独自に考案した、人間の欲求を体系化したものです。
人間の欲求は、「環境軸」と「時間軸」という、2つの大きな軸で捉えることができます。
環境軸は「主体・状況・客体」、時間軸は「未来・現在・過去」とそれぞれ3つに分類され、この3×3の組み合わせで、9つの欲求を定義しています。

 1. 環境軸
  ・ 主体:自分ひとりで欲求が喚起されるもの
  ・ 状況:人間が置かれている状況によって欲求が喚起されるもの
  ・ 客体:人間の周りにあるモノによって欲求が喚起されるもの

 2. 時間軸
  ・ 未来:未来に起こり得るものへの期待や想像によって欲求が喚起されるもの
  ・ 現在:現時点で起こっていることによって欲求が喚起されるもの
  ・ 過去:過去に起こった現象や事象によって欲求が喚起されるもの

この9つの欲求は、「なぜターゲットはその行動をとらないのか(阻害している欲求は何か)」「どの欲求を刺激すれば自発的に動くのか」といった観点で分析・検討する際に活用できます。
課題把握から体験設計に至るまでのさまざまな段階において、この“欲求”という視点をレンズのように用いることで、ユーザーの「気持ち」や「モチベーション」といった感情を考慮した課題解決型の体験設計が可能になる──まさに起点となる考え方です。


※詳しく知りたい方は、以下解説記事をご参照ください
ゲームフルデザインにおけるSEGA XD独自メソッド



3-1-1:本質的な課題を設定するフレームワーク「Uボード」

では、どのように「解決すべき課題」を見つければ良いのでしょうか。
そこで役立つのが、セガ エックスディーが考案したCXデザイン(体験設計)の独自フレームワーク「CXのあいうえお®︎」の一つである「Uボード」です。

Uボードとは、企業とユーザー双方の立場から課題を設定するためのフレームワークです。従来のフレームワークで起こりがちな、企業側の一方的な課題設定を避け、ユーザーの真のニーズを深掘りできるため、本質的な課題を発見しやすくなります。

Uボードは、左側の「プロジェクトチーム(=企業)」と、右側の「未来の利用者(=ユーザー)」を配置した2つの領域で構成されています。現状分析や未来像などの各項目を埋めていくことで、企業サイドとユーザーサイドのAS-IS、TO-BEのギャップを整理することができ、課題抽出に役立ちます。最終的には、双方の視点を照らし合わせることで「サービスコンセプト」を導き出します。

ここでの重要なポイントは、ユーザーを「30代男性」といった属性ではなく、「特定の行動をとる(あるいはとらない)人」として定義することです。
企業サイドのAS-IS、TO-BEは、課題設定を行う当事者であるため比較的把握しやすい一方、ユーザーは多くの場合、目の前におらず、イメージしにくい傾向があります。そこでユーザー像を具体的に描き、「人間の行動」のレベルまで分解することで、どの欲求にアプローチすれば解決につながるかを把握しやすくなります。
人間の欲求は、このユーザーの現状(AS-IS)とあるべき姿(TO-BE)のギャップを理解するためにも活用できる、重要な視点となります。


※「CXのあいうえお」の詳細は、以下解説記事をご参照ください
顧客体験を創造する鉄板フレームワーク「CXのあいうえおⓇ」



3-2:人の心を動かす解決策としてのゲーミフィケーション

では、Uボードで本質的な課題が設定できたところで、次にそれをどのように魅力的な解決策に落とし込めば良いのでしょうか。
ここで役立つのが、人がつい夢中になってしまう「ゲームの仕組み」です。ゲームをする理由を聞かれたとき、大抵の人は「ただ楽しいから」「ついやってしまう」と答えるのではないでしょうか。

そう、ゲームには「ついやってしまう」「ついやり続けてしまう」といった、人の心を動かし行動へと促す力があります。それらゲームのメカニズムやデザイン要素は、非ゲーム分野でも応用できます。それが「ゲーミフィケーション」です。

さらに、ユーザーが「ついやってしまう」「ついやりたくなってしまう」「ついやり続けてしまう」体験設計をするための手法としてゲーミフィケーションを活用するアプローチを「ゲームフルデザイン」と呼びます。このゲームフルデザインは、人間の欲求を深く理解し、心を動かす課題解決策を導き出すことを得意としています。
その根底にあるのが、前述で紹介した人を動かす根源的な力「9つの欲求」です。



3-2-1:「Oボード」を活用した体験デザイン

CXのあいうえおの一つである「Oボード」は、ゲーミフィケーションのナレッジを凝縮し、「ついやってしまう」「ついやりたくなってしまう」「ついやり続けてしまう」体験を生み出すためのフレームワークです。

Oボードは、人間の根源的な9つの欲求と、それぞれの欲求に働きかける101種類の体験デザイン手法を体系的にまとめたものです。
これにより、人の感情や欲求に深く働きかける体験設計が可能になり、課題解決へと導くことができます。
売上の伸び悩み、新商品の差別化、既存サービスの強化など、人が介在する様々なケースに対応できる柔軟性の高いツールです。



4.まとめ

本記事では、課題解決の基本から効果が出ない理由、そして具体的なアプローチまでを解説してきました。
本記事のポイントは、次の3点です。

・「課題設定」の重要性
ビジネスを成功に導くためには、解決策を検討する前に、本質的な「課題設定」を行うことが重要です。

・人間の「根源的欲求」の理解
人を惹きつけ行動へ促すには、表面的な要望だけでは不十分であり、人間の根源的欲求を深く理解することが欠かせません。

・「ゲームフルデザイン」の活用
人の根源的な欲求に働きかける「ゲームフルデザイン」を活用することで、「ついやってしまう」「ついやりたくなってしまう」体験設計を可能とし、真の課題解決につながります。


課題解決は、課題抽出と適切な課題設定から始まります。
多くの課題には人が関わっており、その意味で体験設計・体験構築を軸としたアプローチは大きな効果を発揮します。もちろん、強制・ルール化・報酬といった外発的動機づけによる改善が必要な場面もあるでしょう。
しかし、これらの手法だけでは改善が進まないケースも少なくありません。
そうした場合には、「人の心を動かし、内発的に行動を引き出す」課題解決法として、ゲームフルデザインを活用してみてはいかがでしょうか。
この記事が、課題解決への理解を深め、自社のプロセス改善の一助となれば幸いです。



最後まで読んでいただきありがとうございます。
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