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カスタマージャーニーの進化系!?リピータージャーニーとは? 繰り返し使いたくなる体験デザインの設計方法

  • CXデザイン

多くの企業が、新規顧客の獲得に多大なリソースを投じています。広告を出稿し、キャンペーンを展開し、一人でも多くの顧客と接点を生み出そうと努力を重ねています。

しかしその一方で、「苦労して獲得した顧客が、一度きりの(または数回の)利用で離脱してしまう」「なぜ戻ってこないのか、原因が分からない」といった課題を抱える企業は少なくありません。マーケティングコストをかけて注いだ水が、底の空いたバケツから次々と流れ出てしまうような状態では、どれだけ蛇口をひねっても事業の持続的な成長は望めません。

アプリ・ECでの定期購入から、実店舗への再来店やリピート購入にいたるまで、LTV(顧客生涯価値)が重視される現代において、この“リピートの壁”をどう乗り越えるかは、事業成長のカギとなるテーマです。

そこで本記事では、この課題を解決する新しい視点として、顧客(またはユーザー)が繰り返し利用したくなる粘着性(スティッキネス)のある体験をデザインするための概念「リピータージャーニー」を紹介します。

また、リピータージャーニーと聞いて多くの方が思い浮かべるであろう、カスタマージャーニーといった「従来のジャーニーマップ」との違い、そして今なぜ“繰り返し使いたくなる体験デザイン”が求められるのか、その背景などについても解説します。

この記事が、顧客との関係を「点」ではなく「継続的なサイクル」で捉え直すきっかけとなれば幸いです。


※粘着性(スティッキネス):ユーザーが商品やサービスに強く惹き付けられている状態を指す言葉。「イマーシブ(没入感)」が継続する状態や「沼る」と近い意味合い


1.ジャーニーマップとは

リピータージャーニーの必要性を語る前に、まず共有しておきたいのが、従来のジャーニーマップが果たしてきた役割です。ビジネスの現場では、顧客の行動や感情を可視化するために複数のジャーニーマップが使われていますが、それぞれ目的が異なるため、正しく使い分ける必要があります。

ここでは、一般的に活用されている2種類のジャーニーマップを紹介します。



1-1:カスタマージャーニーマップ(Customer Journey Map / CJM)

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスを認知してから購入、さらに継続利用に至るまでの一連のプロセスを、行動・思考・感情の観点から可視化するフレームワークです。主にマーケティング、セールス、カスタマーサクセスの領域で活用され、企業やブランドとの接点(タッチポイント)に着目しながら、顧客の意思決定プロセスを整理し、戦略立案に役立てます。顧客がどのタッチポイントで認知し、興味を持ち、比較検討し、購買し、そして継続利用に至るのかを明確にすることで、効果的な施策設計が可能になります。

カスタマージャーニーマップは、スコープの設定により、認知から再購入までを描くことも、初回購入までに絞ることもできます。対象期間も数時間から数年まで幅広く、汎用性の高いツールです。

ただし一般的には、認知から初回購入、さらにはSNSなどで共有に至るまでの流れを扱うケースが多く、Web上でもその範囲を紹介する例が一般的です。皆さまもそのようなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。



1-2:ユーザージャーニーマップ(User Journey Map / UJM)

ユーザージャーニーマップとは、ユーザーが商品・サービスを利用する過程を、行動や操作、そこで生じる感情の変化とともに可視化するフレームワークです。主な目的は、UI/UXの改善や機能設計に活かすことで、利用体験の中に潜む懸念点やボトルネックを明らかにし、より良い体験へとつなげます。ユーザーがどのように機能を使い、どこで迷い、どんな感情を抱くのかを構造的に整理することで、必要な改善すべきポイントや新たな機能ニーズを把握できる点が特徴です。

一部ではカスタマージャーニーと同様にタッチポイント設計に用いられる場合もありますが、ここでは顧客体験(CX)を扱うカスタマージャーニーと区別し、ユーザー体験(UX)に特化した設計手法としてユーザージャーニーを扱います。



2.従来のジャーニーマップが抱える問題点

前述の通り、ジャーニーマップは顧客体験(CX)・ユーザー体験(UX)を整理するうえで非常に強力なツールです。しかし、現代のビジネス環境においては、これらだけではカバーしきれない“死角”が存在します。

それが、今回のテーマでもある“繰り返し使いたくなる体験”です。従来のジャーニーマップは、ユーザーが繰り返し利用する際の“循環構造”を表現するのに向いておらず、継続利用の体験が十分に考慮されない傾向にありました。

これまでの事業構造では、新規顧客の開拓が中心であり、顧客体験(CX)のタッチポイント設計においても、初回購入やSNSでの拡散までのプロセスを描けば十分でした。サービス設計におけるユーザー体験(UX)も、いかにストレスなく「スムーズに」目的を達成させるかという効率性が重視され、体験の「滑らかさ」や「ストレスの除去」が最優先されてきました。



2-1:なぜ今、繰り返し使いたくなる体験デザインが求められるのか

では、なぜ今「繰り返し使いたくなる体験デザイン」が求められるのでしょうか?

現代はモノや情報が過剰にあふれ、ITの普及により機能やスペックでの差別化が難しくなっています。UI/UXの水準も全体的に向上し、「使いやすい」ことはもはや前提条件といっても過言ではありません。こうした環境下では、ユーザーが選ぶ理由は、情緒的価値へとシフトしていきます。企業が提供すべき価値は、機能そのものだけではなく、ユーザーが“使いたくなる体験”、さらには“使い続けたくなる体験”をどう生み出すかに移りつつあります。


さらに人口減少が進む中、新規ユーザーの獲得に依存した成長モデルは限界を迎えつつあります。企業にとって重要なのは、既存顧客との関係を深め、LTVを高めていくことです。しかし現状では、「何度も使いたくなる理由」まで踏み込んだ体験設計が十分に行われていないケースが多く、機能改善やキャンペーン施策が単発で終わってしまうことも少なくありません。

ユーザーに再訪・再利用を促すためには、機能や価格といった合理的価値だけでは不十分です。人が自然と動きたくなる心理や欲求を踏まえた、“ついやり続けたくなる体験”の設計が欠かせません。商品やサービスの同質化が進む今こそ、情緒的価値を高め、リピートを促す体験設計が企業の競争力を左右する鍵になると言えそうです。



3.これからの顧客体験の鍵「リピータージャーニー」とは?

いかにして「一度使って終わり」にさせず、ユーザーがサービスに熱中し、繰り返し使いたくなる粘着性(スティッキネス)のある体験を設計するのか。直線的な従来型のジャーニーマップでは描ききれない、この「ユーザーが繰り返し使いたくなるサイクル」の設計こそが、現代のマーケティングや事業設計が直面する問題点を突破する重要なファクターとなりそうです。

ここからは、本記事の主題でもある「リピータージャーニー」について解説していきます。



3-1: 繰り返し使いたくなる体験デザイン「リピータージャーニー」

「リピータージャーニー」とは、繰り返し使いたくなる体験をデザインすることを目的に、ユーザーの動機・行動・感情の変化を可視化し、継続的な利用を生み出すサイクルを設計する考え方です。

従来のジャーニーマップが「入り口から出口まで」の一連の体験を描くのに対し、リピータージャーニーは「入り口から出口、そして再び入り口から入る循環」を描きます。
このようにユーザー体験を設計することにより、ブランドへの愛着(エンゲージメント)やLTV(顧客生涯価値)向上を目指すアプローチです。

ここでは、このリピータージャーニーを設計するフレームワークを2つご紹介します。



① コア 体験サイクル

まずは、ユーザーと商品・サービス双方にとって最も重要な体験サイクルを設計するフレームワークとして、セガ エックスディーが独自に開発したCXデザインフレームワーク「CXのあいうえおⓇ」の一つである「Iボード」を紹介します。

「Iボード」は、商品やサービスを“繰り返し使いたくなる”状態を生み出すために、コアとなる体験サイクルを設計するフレームワークです。

ユーザーが商品・サービスを初めて利用する場合と、2回目以降に利用する場合のそれぞれについて「きっかけ → 欲求 → 行動 → 結果 → 感情の変化 」という一連のプロセスを可視化し、体験の本質をデザインします。


< I ボード >


<ファッションECアプリ 事例>
ここでは、よくある「ファッションECアプリ」事例としてご紹介します。


初回利用のみの体験

まず、コア体験サイクルを検討する前に、初回利用のみの体験を見てみましょう。

ユーザーは、SNS広告(例:シーズンセール)をきっかけに商品を認知し、「欲しい」「安い」という理由で購入意欲が高まります。その後、アプリに遷移して商品を購入し、決済が完了します。商品が届くことへの期待が生まれ、「楽しみ」という感情で体験が終わります。



この流れは一般的ですが、この体験だけでユーザーが再びそのアプリを利用するでしょうか?
もちろん、別の広告をきっかけに再訪する可能性はあります。しかし、その場合は、「欲しい商品が安かったから」という同様の理由に依存しており、サービス自体への動機付けは強化されていません。

ファッションECにおいては代替手段が多く、「どこでも買える状態」になりやすいため、購入後はサービスが想起されなくなる可能性があります。また、“安さ”を主軸にしている場合、より安価な競合が現れると乗り換えられるリスクも高まります。



繰り返し利用につなげる設計

次に、繰り返し利用を促す仕掛けを組み込んだコア体験サイクルを見てみます。

初回の認知は同様に広告から始まりますが、購入後に「購入アイテムを使った他ユーザーのコーディネート」が表示されることとします。これにより、「届くのが楽しみ」という感情に加え、「さまざまな着こなしを試したい」という期待が生まれます。

このように、体験の終わりをポジティブな感情で設計することが重要です。

その後、アプリからの通知が届くと、このポジティブな記憶が喚起され、再訪行動につながります。必ずしも次回の訪問で購入に至るとは限りませんが、接触回数が増えることで購買確率は高まります。

初回のみと繰り返し訪れたくなる仕掛けを盛り込んだコア体験サイクルを見比べてみて、いかがでしょうか?

このように、初回と2回目以降では、来訪動機が異なります。多くの場合、初回獲得や味や質など商品品質(商品の場合は、機能やスペック)の向上に注力しがちです。もちろん、おいしいから、好きだからという理由で、再訪することもあると思います。しかし、コア体験サイクルでは、これらを分けて考え、体験をポジティブに終わらせ、その感情を次の行動につなげる循環設計を行います。

※セガ エックスディーが独自に開発したCXデザインフレームワーク「CXのあいうえおⓇ」の詳細は以下より参照ください
顧客体験を創造する鉄板フレームワーク「CXのあいうえおⓇ」



② モチベーションサイクル

モチベーションサイクルとは、ユーザーの行動(アクション)、得られる結果、発生する変化(パラメータ)、そして感情の動きを整理し、商品・サービスによって得られる体験全体を構造化したものです。モチベーションを軸に体験を循環させる設計手法であり、「なぜ使い続けるのか」という動機づけを明確にします。新規サービス開発だけではなく、既存サービスの改善や課題分析にも活用することができます。

これは、ゲームデザインの世界で用いられるモチベーション設計と、心理学的な行動デザイン手法を組み合わせて、やり続けたくなる体験として活用した体験設計のアプローチです。

前述の「Iボード」では、コアな体験に焦点を当てるのに対し、モチベーションサイクルは体験全体の構造を拡張して捉え、機能設計や仕様検討の指針として活用されます。


モチベーションサイクルでは、「アクション」「パラメータ」「結果」、そしてそれらによって引き起こされる「ユーザー感情」のそれぞれを、因果関係で接続します。
「何をすると何が起こり、どのような感情が生まれるのか」を設計することで、体験と感情を結びつけ、より強い動機づけを生み出します。

また特徴的なのは、「サービス内」だけではなく、「サービス外」からの流入や再訪のきっかけも含めて設計することにより、継続利用を促すことに役立つ点です。


<ファッションECアプリ 事例>

ここでは、コア体験サイクルで紹介した「ファッションECアプリ」をベースに「ユーザー投稿型コーディネートの閲覧&投稿の仕掛け」を組み込んだモチベーションサイクルを図式化しています。アプリを開く動機づけを強化しつつ、UGC(ユーザー生成コンテンツ)でアプリ内コンテンツを増加させるサイクルです。

また、コア体験にはなかった「ランクアップ」などのパラメータを追加することで、ユーザーの継続利用を促す仕組みをより具体化できます。

モチベーションサイクルは、このようにコア体験を基盤としつつ、追加要素を組み込むことで、より精緻な体験設計を行うために活用されます。

このように、顧客との長期的な関係を構築するためには、単なる利便性を超え、ユーザーの内発的動機を刺激し、「また使いたくなる体験」を意図的に設計することが不可欠です。

LTV向上が求められる現代において、顧客と継続的に関係を築く「リピータージャーニー」の視点は、今後ますますその重要性を増していくはずです。


これらのリピータージャーニーを設計するにあたっては、具体的なアクションへ落とし込んでいく必要があります。 当社では、人間の原理的な欲求(内発的動機付け)にアプローチする「ゲームフルデザイン」の考え方を用いてこの設計を行います。本記事ではその詳細については割愛しますが、具体的な手法や事例に興味のある方は、以下の資料よりご参照ください。

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3-2:3つのジャーニーマップの比較と使い分け

ここで改めて、従来のジャーニーマップとリピータージャーニーの違いを整理します。

< 3つのジャーニーマップの比較表 >

項目 カスタマージャーニーマップ(CJM) ユーザージャーニーマップ(UJM) リピータージャーニーマップ(RJM)
主眼 CX全体 UX改善 継続・習慣化
構造 直線型 直線型 循環型
役割 顧客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでのプロセス(CX)を可視化 ユーザーが商品・サービスを利用する過程(UX)を詳細に可視化 ユーザーが繰り返し使いたくなる体験の"循環構造"を設計
主対象 顧客 ユーザー 顧客→ユーザー(リピーター)
目的 顧客の意思決定プロセスの理解/タッチポイントの設計 「使いやすさ」の設計/機能設計の最適化 「使いたくなる/使い続けたくなる」体験サイクルの設計/内発的動機づけの創出
主な活用方法 マーケティング戦略・セールス戦略立案 UI/UX改善/操作上のボトルネック発見 体験設計/リピート率向上/LTV最大化


これら3つのジャーニーマップは、互いに競合するものではなく、役割・目的・視点が異なる補完関係にあります。それぞれのフェーズや目的に合わせて使い分けることで、より最適な顧客体験(CX)、ユーザー体験(UX)の設計や改善につなげることができます。


4.まとめ

本記事では、従来のジャーニーマップの限界と、それを補完・進化させる考え方としての「リピータージャーニー」について解説しました。

最後に、重要なポイントを3つに整理します。

  • 1. これからは「直線」ではなく「循環」
    カスタマージャーニーやユーザージャーニーは、認知から購入・利用までの“直線的な体験”を描くのに適したフレームワークです。しかし、LTVが重視される現代では、一度きりで終わらせず、「また使いたい」と思える循環構造を設計することが不可欠です。顧客との関係を“点”ではなく“サイクル”で捉える視点が、持続的な成長の基盤となります。

  • 2. 機能的価値だけではなく「情緒的価値」がリピートを生む
    使いやすさや便利さ(機能的価値)は、今や前提条件です。差別化の鍵となるのは「なぜかまた使いたくなる」「つい続けてしまう」といった感情や内発的動機づけを刺激する体験設計です。ブランドへの愛着や達成感、期待感など、情緒的価値をどのように組み込むかが、リピート率を大きく左右します。

  • 3. 繰り返し利用したくなる体験を設計する「リピータージャーニー」
    リピータージャーニーとは、繰り返し使いたくなる体験をデザインするために、顧客の動機・行動・感情の変化を可視化し、継続の仕組みを構築するアプローチです。体験の中心となるコア体験の設計に加え、商品・サービス全体の体験を描くことで、戦略的に「継続のループ」を創出。これにより、既存顧客のアクティブ率向上とLTV最大化を強力に後押しします。


新規顧客の獲得競争が激化する今こそ、「どう出会うか」だけではなく「どう続けるか」を設計する視点が求められています。

皆さまが向き合っている商品・サービスでは、「釣った魚に餌をやらない」状態になっていないでしょうか?あるいは、「継続利用を増やしたい」と願いながら、繰り返し利用したくなるための道筋が描けていないままになっていないでしょうか?

リピータージャーニーの設計は、顧客に「また使いたい」と思ってもらうための具体的な地図を描くこと。偶然のリピートに頼るのではなく、体験そのものをデザインすることによりリピーターを増やすことを目指すのがリピータージャーニーのアプローチです。

この記事が、皆さまの商品・サービスにおいて、顧客との関係をより長く、より深く育てる一助となれば幸いです。



最後まで読んでいただきありがとうございます。
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