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【日本IBM】脱・やらされ研修。大人が本気で熱中する生成AI研修「バトルワーカーズ」がもたらす “楽しい” 学びと定着とは

文責:マーケティング・コミュニケーション課

  • UI / UX デザイン

セガ エックスディーは「ついやりたくなる」ゲーミフィケーションのナレッジを生かし、さまざまな企業のサービス設計を支援してきました。日本アイ・ビー・エム株式会社(以下日本IBM)が「ゲーム感覚で生成AIを学べる研修サービス」として展開する『Generative AI Card Game Training – バトルワーカーズ』(以下、バトルワーカーズ)もその一つです。

先進的なイメージのある日本IBMが、なぜAI研修にゲームという手法を選び、活用したのか。バトルワーカーズのプロジェクトをリードする日本IBM テクノロジー事業本部 ビルド・エンジニアリング推進部 田村 孝(タムラ タカシ)さまにお話を伺いました。

■ 生成AIを学べるカードゲーム「バトルワーカーズ」


――まずは「バトルワーカーズ」の概要について教えてください。どのようなサービスでしょうか?

田村孝さま(以下 田村):
バトルワーカーズは、生成AIに関する専門知識を楽しみながら学べる、研修用のビジネスカードゲームです 。研修は、大きく分けて①生成AIを用いてカードを作る②生成AIによるカード作成の裏側の仕組みを学ぶ③作成したカードで戦って遊ぶという3部構成になっています。

受講者は、「バトルワーカーズ」のシステムを通じて、自分が日頃行っている業務を3つ入力し、対戦するためのカードを作成します。ここで、AIへの伝え方が上手ければ、あるいは仕事に対する情熱が込められていれば、それに応じて強いカードが生成されます。受講者はより強いカードを作るために、もくもくとAIと向き合うことなります。

その後、AIの仕組みを理解する座学のコーナーに進みます。といっても、単なる座学ではなく、カード作成のプロセスを振り返りながら、「このカードを作った時になぜこの点数になったのか」「なぜこのメッセージが出たのか」といったように、①で受講者が実際に体験したことに基づいて、「ネタばらし」的にAIの特性や原理を学んでいくのです。最後に、完成したカードを印刷し、カードゲームとして対戦します。これは参加者の交流を目的としており、それぞれのプレイヤーが入力した仕事を互いに知ることで、チームビルディングにもつなげる狙いがあります。

『バトルワーカーズ』プレスリリース:https://jp.newsroom.ibm.com/2025-11-17-generative-ai-card-game


――体験が先にあるからこそ学びが深く刻まれるのですね。どのような経緯で、このバトルワーカーズの開発に至ったのでしょうか?

田村:
私はAIエンジニアとして、企業・法人の社内DXや、AI導入をサポートしています。その中で、あるクライアントから「AI活用の研修を楽しくしたい」という相談を受けたことがきっかけでした。その企業は「社内で生成AIの活用を推進していきたいが、普通の研修をやるだけでは浸透しない」といった危機感を持っていました。実際、一般的なハンズオン研修や講座は退屈で、受講者の大半が内職をしているという状態はよくあると思います。必要に迫られてしぶしぶ受けるだけの「やらされ感」を払しょくするにはどうしたらいいかと考え、生まれたのがバトルワーカーズの原点です。

実際に研修を実施すると、受講者からの反応が非常によかった。一番前の席に座っていた若めの社員が「俺、こういうのめちゃくちゃ好きです!」と前のめりで取り組んでくれたのが印象的でした。その企業で非常に手ごたえを感じたので、一部の企業で終わらせるにはあまりにももったいないと感じ、BtoB向けの研修パッケージとして広げようと「バトルワーカーズ」としてサービス化したという経緯です。


――バトルワーカーズの体験設計において、特にこだわったポイントはどこでしょうか?

田村:
特にこだわったのは「公平性」と「世界観」です。まず「公平性」に関しては、職位や実務経験によるギャップが、生成するカードの強さに影響しないルール設計を徹底しました。新入社員であってもベテランの社員であっても、同じ立場で「最強のカード作り」に挑戦し、対等に戦うことができます。

次に「世界観」ですが、研修であることを忘れさせるほどの没入感を作るため、「2030年のシン東京」という舞台を設定しています。この世界では、AIが人間のようにふるまい、人間が機械のように働いている、という設定です。その中でも人間が人間らしさを表現するために、「仕事への情熱」を込めたカードを作るといったストーリーになっています。というのも、AI時代の働き方として、AIを使ってバリバリ最適化することが正解なのかというと、そうではないと考えているからです。むしろ、仕事にかける情熱や、AIに使われずに使いこなす力が大事。そういったメッセージを、ゲームの世界観を通して伝えています。研修講師が言葉で説明すると説教くさくなりますが、ゲームにおける物語として伝わるので、受講者にも受け入れられやすい。AIを学ぶにあたって、前向きな姿勢を引き出すことができるのです。


【セガ エックスディーのプランナーが語る!】 「バトルワーカーズ」に活用したゲーミフィケーション

バトルワーカーズでは、主に「能動的な学習姿勢の獲得」と「学習内容の定着と実践」を促すために、ゲーミフィケーションによる体験設計を行いました。

● 能動的な学習姿勢の獲得

「やらされ感」のある研修に対する心理的なハードルを下げ、参加者が自ら没入し楽しみながら学ぶ姿勢を引き出すために、ゲーミフィケーションの手法である「一石二鳥チュートリアル(自律欲求)」、「世界観(自律欲求)」、および「対抗心(関係欲求)」を活用しています。

・一石二鳥チュートリアル(自律欲求)
押しつけることなく、ユーザーが楽しみながら気づけば知識や操作を自然に習得できるような体験設計を行う手法です。 バトルワーカーズでは、生成AIを学ぶためではなく、「ゲームのカードを生成する」という超短期的な目標を設定しています。いきなりAIのベストプラクティスを座学で教えるのではなく、まずは勉強ではなく「遊び」として入ることで、学習(実践)に対する心理的な抵抗感を無くし、遊びながら自然とプロンプトのコツを習得できる体験を作っています。

・世界観(自律欲求)
利用者の没入感のために、特定のテーマや背景ストーリーを設定しサービスの細部に反映する手法です。 バトルワーカーズでは、「2030年の新東京」を舞台とし、AIが普及した世界で「人間らしさ」を表現する手段として生体カードを用いるという設定を設けています。矛盾のない一貫したストーリー体験を突き詰めることによって、参加者は研修特有の「やらされ感」から解放され、フィクションの世界に没入します。

・対抗心(関係欲求)
利用者の競争心理を煽り、勝利したい・上回りたいという欲求を刺激し行動を促す手法です。 研修においては、役職や経験の有無に関係なく、全員が対等なフラットな立場で、生成したオリジナルカードを使用して参加者同士で競い合う世界観にしています。勝敗を競うことで「負けたくない」「もっと強いカードが欲しい」という競争性が刺激され、大人であっても真剣に遊びながら、より強いカードを狙って何度もプロンプトを工夫して生成する理由付けになっています。



● 学習内容の定着と実践

AIの仕組みやプロンプトのコツを座学で終わらせず、実践的なスキルとして記憶に残し定着させるために、ゲーミフィケーションの手法である「セルフビルド(保存欲求)」を活用しました。

・セルフビルド(保存欲求)
利用者がゼロから作り上げたり、作るプロセスの一部に関与できる要素を入れたりすることで保存欲求を刺激する手法です。参加者は、自分自身の実際の「仕事」をモチーフにし、そこに「情熱」を込めることで、自分だけのオリジナルカードを作成します。自分で自分がモチーフのカードを作ることで、AIに指示を出した製作過程の印象を深く理解することができます。さらに、作成した愛着のあるアイテムを実際に手元に残すことで、研修後も体験を思い出すキッカケとなり、記憶に残りやすく日常業務への応用やスキルの定着がスムーズになります。ゲームの後に行う座学でカード作成の裏側の仕組みを種明かしすることで、これらの体験と紐付いた深い学びへと繋げています。

これら複数のアプローチを組み合わせることにより、単なる座学の研修ではなく、参加者が大人でも本気で遊び、楽しみながらAIの実践的なスキルを身につけられる体験を目指しています。


■ マネージャーも若手も一緒に夢中に。ゲーム体験がもたらす効果

――実際にこの「バトルワーカーズ」を導入されて、どのような成果や反応がありましたか?

田村:
定量的なインパクトとして、これまでに社内外で延べ1000人ほどを対象に研修を展開してきましたが、社外向けの事後アンケート※では「大変満足」が79%、「満足」が19%で、合計すると「満足度98%」という、回答者全員から肯定的な評価を得ることができました。こうした成果を得られたことによって、お客様からお声がけいただくことも増え、IBM社内での受講希望者も増加しており、関心は高まり続けています。

また、現場で最も印象的だったのは、普段は真面目で物静かな50〜60代のマネージャー層の方々が若手社員と一緒になって遊ぶ姿です。役職が上の方ほど数字にこだわってカード作りに没頭し、「こんなに強いカードが作れた」と他の社員に自慢したりするんです。若手社員から「こんな楽しそうな一面を初めて見ました」と言われるほど、童心に帰って熱中していました。これは従来の座学研修やハンズオン研修ではあり得なかった光景です。役職や年齢の壁を超えた、フラットなコミュニケーションが自然と発生するため、当初の目的だったAI学習だけでなく、チームビルディングの面でも副次的な効果をもたらしています。

※事後アンケートは、バトルワーカーを受講された方(N=62)におこなったアンケート (アンケートは2026年4月以降聴取開始)


――ゲーム要素が強い研修は「その場は楽しかったけれど、実務に活きない」という懸念を持たれることもありませんか?

田村:
そこが、このゲーミフィケーション設計の最も優れたポイントです。定着率の面でも効果が見えていて、研修から1ヵ月程度の期間を空けて、IBM社員向けに実施した調査でも、研修時と同等のプロンプトが書けた人は95%(前回と同等 78%、前回とほぼ同等 17%)※ と、大半の参加者が研修で学んだ内容を再現できていました。研修の最初に手を動かしてカードを作ることで自分ごと化した上で、よりよいAIの使い方を学べるので、学習内容の理解が進み、定着に繋っている可能性があります。

生成AIが普及した今、AIを使いこなすことが大事だと言われていますが、使う時間を増やすだけでは不十分です。AIがどれだけ賢くなっても、作業を依頼する際の意図や目的、具体的なやり方などを伝える必要があります。AIの原理や特性、なぜその伝え方が有効なのかなど理解したうえで使うことで、成果が変わってきます。バトルワーカーズは、楽しいだけで終わらないように、AI業界で10年以上働いてきた私自身の経験も踏まえ、実務で活用できる実践的な知識を詰め込んでいます。

※研修を実施した1ヵ月後に、研修に関する情報を与えずバトルワーカーズ上でカードを作成してもらい、前回と同等のスコアが出せた場合、「研修時と同等のプロンプトが書ける」と評価




■ ゲームに縁のない組織で、ゲーミフィケーションサービスを開発・販売する難しさ

――今回、セガ エックスディーとの協業でプロジェクトを進めてよかった点や発見はありましたか?

田村:
特に、担当してくださった藤川さんの底知れない「ゲーム愛」の深さと、ゲーム愛ゆえの圧倒的なナレッジの多さに驚かされました。常に「なぜこのゲームは人々をここまで熱狂させるのか」「どういう心理的導線を作れば人が能動的に動くのか」という視点を持っているんだな、と。私自身も勉強になり、最近はゲームの見方が変わってきました。

そして、「世界観を突き詰めて矛盾のない一貫した設定を作る」ことに対して、徹底している姿勢がすばらしいと思いました。世界観を作り込んでいく過程で、少しでもズレがあるとプレイヤーが冷めてしまって没入できない、という考え方なんですね。表に出ない細部の設定まで一貫した体験のためにこだわり抜くところが驚きでした。例えば、バトルワーカーズの年代は「2030年」という設定です。2進化の速い生成AIがテーマなので、「20XX年」などの遠すぎる未来ではなく、想像できるちょっと未来であることが重要でした。おかげさまで、バトルワーカーズの受講者に世界観の設定について何か聞かれても、私も必ず答えられます。こういった一貫した体験が、受講者の満足感や高い効果につながっているのだと思います。


――ゲーミフィケーションを活用したサービスを展開するにあたって、社内の調整で苦労した点はありますか?

田村:
ローンチに至るまでには、社内のあらゆる部署とのコミュニケーションが必要でしたね。IBMの通常の業務では、アメリカの本社からトップダウンで降りてくる方針に基づいて動くことがほとんどなので、今回のようなボトムアップで、しかも「独自のゲームを開発・販売する」というのは非常にイレギュラーなんです。なので、そもそもこういったゲームプロダクトを承認するプロセスがありません。

そこで、法務や知財、広報、購買、そしてデザイン部門といった、社内のあらゆる部門にかけあいました。その中でも広報は、これからのIBMのイメージとしても、ゲームのようなエンタテインメント要素がポジティブに働くと捉えてサポートしてくれました。難しかったのが、グローバルに厳格な基準を持っているデザイン部門です。本社の役員まで確認し「日本市場限定でのリリース」として、なんとか承認を得ることができました。全く新しい取り組みだったので、「誰のOKをもらえばリリースできるのか」から自分で考えて動く必要があったのですが、現在では社内でも新しい取り組みとして関心を集めています。


――「バトルワーカーズ」およびゲーミフィケーションを活用した取り組みについて、今後の展望をお聞かせください。

田村:
まずは「バトルワーカーズ」のシステムや機能面の進化として、対戦後にプレイヤーに対して「あなたのプロンプトのどこが優れていて、どこを改善すればさらにAIを使いこなせるか」を個別に出力する、AIによる具体的なフィードバック機能の開発を進めています。そして今後も、研修を実施した企業からの声を聞いて、受講者の学びにつながる機能を継続的に追加していきたいと考えています。また、「バトルワーカーズ」を多くの方に体験してもらえるように、提供の仕方もバリエーションを増やしていけたらと考えています。例えば、社員研修を提供している企業と連携して、他の研修と一緒に実施してもらうといった展開もあり得ます。

また、今回の取り組みでゲーミフィケーションの持つ「人が熱中する力」の重要性を実感したので、他の業務にも活かしていきたいですね。普段私がエンジニアとして開発しているプロダクトにも、「またこのシステムにログインしたい」と思ってもらえるような面白い仕掛けなど、ゲーミフィケーションを活用できたらと思います。



■ 関連リンク

・生成AI研修『Generative AI Card Game Training - バトルワーカーズ』 PV:
 https://www.youtube.com/watch?v=9KVjpSTooVc





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