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【みずほポシェット】金融とエンタテインメントのプロが作り上げた金融経済教育を学びたくなるアプリとは!?

文責:マーケティング・コミュニケーション課

  • 導入事例


みずほフィナンシャルグループとセガ エックスディーの合弁会社「みずほポシェット」が開発した“お金のおけいこ”アプリ『PochettePlus(ポシェットプラス)』が2025年4月24日にサービスを開始しました。

本記事では、共同で新規事業投資を行い当社も主体者となって推進する「共同事業」として、金融とエンタテインメントという異なる領域のプロフェッショナルが、どのようにして“学びたくなる”体験をつくり上げたのかを、みずほポシェット 代表取締役社長の小原 綾子氏と、セガ エックスディー 取締役 執行役員COO 兼 みずほポシェット 取締役の伊藤 真人にお話しを伺いました。

<この記事でわかること>
 ● 『PochettePlus』というサービスが生まれた背景・想い
 ● ゲーミフィケーション(ゲーム)という手段を選択した経緯と感触
 ● 合弁会社という形態を選択した理由とそのメリット
 ● サービス開発でこだわったポイント
 ● ユーザーの声を反映したポイント

まず、簡単に『PochettePlus』のサービスについてご紹介します。


■ 『PochettePlus』とは


『PochettePlus』は、小学生を対象にした金融経済教育が行える学習アプリです。本アプリは、親の「子どもに勉強してほしい」想いと、子どもの「遊びたい」ニーズを両立させた、親子で楽しくお金の役割や経済について学ぶことをコンセプトとして開発しています。
お金を稼ぐ大切さや、稼いだお金の増やし方、お店経営といった、3つの体験を親子で会話を交わし進めることにより、楽しみながらお金との付き合い方を学ぶことができます。

<主な機能>
本サービスは、3つの機能で構成されています。
1つ目は、お金を稼ぐことを目的に親子間で会話が自然に発生する仕掛けを盛り込んだ「お手伝い」機能、2つ目は、貯めたお金の増やし方を疑似的に学べる「運用」機能、3つ目は、アプリ内の異世界ポシェットタウンを舞台にお店経営を体験できる「経営ゲーム」機能です。


①「お手伝い」機能
(お金を稼ぐ体験)

子どもたちは大人と相談しながら欲しいものを決め、お手伝いをすることで、お小遣いを獲得します。
子どもたちは労働の対価(お小遣い)を得るために、汗を流して働くことの重要性を学ぶことができます。

②「運用」機能
(お金を増やす体験)

子どもたちは自分で稼いだお小遣いを、大人と相談した上で運用します。
子どもたちは運用を通じ、国際政治やビジネスに興味を持つことができるとともに、疑似的に運用の経験を積むことができます。

③「経営ゲーム」機能
(経営の体験)

子どもたちはアプリ内の異世界ポシェットタウンを舞台にお店経営をします。
お店経営を体験することで、社会の仕組みを学ぶことができます。

【親子の会話を発生させる工夫】
経営ゲームを進めるために、お手伝いで得られるジュエル(ゲーム内通貨)が必要な場面が発生します。
そのため、「お手伝い」を追加するなどの対応が求められることにより、必然的に親子の会話が発生する仕掛けになっています。実際の企業も登場することで、現実の社会に対する理解も進みます。




子どもたちが夢中になり学べる『PochettePlus』は、どのような想いと工夫から生まれたのでしょうか。
ここからは、プロジェクトをリードしたお二人に、そのストーリーを語っていただきます。



■ みずほポシェット誕生の背景

———まず、今回のサービスにおける最大のテーマでもある日本における「金融経済教育」ついて、どのようにお考えですか?

みずほポシェット 小原綾子社長(以下小原):
金融経済教育は、「面白くない」「難しい」などのネガティブワードが多く飛び交い、あまり進んでいないというのが実態です。ただ、誰もがお金と付き合っていく必要があります。お金は生きていくうえでも特に大切なテーマで、お金との付き合い方を間違えると人生が大きく変わってしまう可能性もあります。

しかし、そのような危険があるにも関わらず、今の日本では多くの人がお金について教わることなく大人になってしまっている現状があります。



———つぎに「みずほポシェット」を立ち上げた背景を教えてください。

小原:みずほポシェットは、2024年の4月に設立しました。ですが、実は2019年の夏ごろに立ち上がった社員のアイデアを事業化する「みずほ次世代金融推進プロジェクト」で提案し、その重点案件の一つとして選ばれたことから始まります。

当初は、みずほ銀行外為営業部に所属し、本業をこなしながら、その傍らで支店内の空きスペースを活用した学童保育のプロジェクトとして動き出しました。しかし、翌年、新型コロナウイルス感染拡大により、学童の現場は大混乱となり、プロジェクトの進行が難しくなってしまいました。そして、このまま何もやらないと、このプロジェクトが消えてしまうのではないかとの想いから、「みずほらしい金融経済教育を提供する」というテーマを掘り下げることになり、それが今の活動につながっています。


———そうなのですね。では、そこからゲーム・エンタテインメントにいきつくには、どのような経緯があったのでしょうか?

小原:まさに、そのコロナ禍に子どもたちを楽しませようと実施した寸劇の影響で、「エンタテインメントを活用することにより、世の中の金融経済教育に何かきっかけを与えられるのではないか」という可能性を見出したことによります。

コロナ禍は、子どもが外で遊ぶこともできず、大声で笑うこともできず、どんどんと子どもたちの楽しめる場所を奪っていきました。そこで、子どもたちを楽しませてあげたいとの想いから、学童の事業者さんとともに、子どもたちが楽しめるイベントを実施することにしました。

面白いことができないかと考えるなかで、お金について学ぶことができる寸劇を演じることにしました。
「おかね博士」というキャラクターを作り、お金に関するクイズを出題したり、世界のお金を紹介したりと、素人ながら精一杯演じました。すると、子どもたちにも親御さまにも「面白い」「学びになる」と好評で、「またやってほしい」という声まで上がるほどでした。その後、何回か継続して同じようなイベントを実施しましたが、どの回もポジティブな反応を得ることができました。



———その後、数あるエンタテインメント企業の中から、なぜセガ エックスディーを選んでいただけたのでしょうか?

小原: 実は、他にも数社と面会する機会をいただいたのですが、お会いする前から「もしかするとここは良いのでは?」という直感はありました。他の企業は、ゲームをつくる部署の方と直接お話しすることができず、経営企画の方との面会だったことも大きかったと思います。

私たちは、金融についてわかっても、ゲームやエンタテインメントは素人のため、その日、打ち合わせに参加していた伊藤さんと話して、エンタテインメントに関するナレッジはさすがだなと感じました。このような人たちと一緒に取り組めば「金融×エンタテインメント」という今までなかったものが創り出せるのではないかと感じさせてもらえたことは大きいと思います。

当初、テレビゲームのようなものをつくる構想をしており、それを伝えた時に、伊藤さんから「これではヒットさせることは相当難しいだろう」と率直な指摘をいただけたことも好印象だったと記憶しています。



———そうして「みずほポシェット」ができたのですね・・・ちなみに、今回は受発注ではなく、合弁会社という形態を取っていますが、どのような経緯からでしょう?

小原:初めて伊藤さんとお会いしたときに、その可能性についても伺いましたが、合弁会社には、私なりの深いこだわりがあります。

30代のころ、外為営業部に所属しており、アジアを中心に日本企業の海外進出支援を行っていました。海外での現地法人立ち上げから、トラブル解決の相談まで携わり、様々な会社の事業パターンや、成功している会社、失敗している会社を見てきました。

現地の会社とうまく掛け合わせることにより成功したケースを目の当たりにして、双方の強みを活かすことのできるのは合弁会社だと実感していたため、自分で何かに挑戦するときはこの形態にしようと決めていました。



———異業種の企業で合弁会社を設立するメリットと難しかったポイントを教えてください。

小原:お互いが異なる領域のプロフェッショナルであるため、双方の持っている強みをうまく掛け合わせることにより、足りない部分を補完し合える点がメリットだと考えています。エンタテインメントについて、すぐ聞ける相手がいるのは、本当に強みです。

セガ エックスディー 伊藤真人(以下、伊藤):そうですね。自分たちがノウハウとして持っていない部分を補完してもらえるのは、圧倒的なメリットです。つながりやノウハウがない中、1社単独で取り組むよりもかなりプラスになるというのは、日々感じています。

小原:一方で、銀行とゲーム会社は業界としてかなり異なるため、カルチャーや仕事の仕方がかなり違った点は、難しかったポイントかと思います。

伊藤:お互いがお互いの分野について知識がないことも大変でした。金融用語でわからない言葉もあれば、同じ言葉なのにニュアンスや認識が違うこともかなりありましたね。

開発手法も違っていて、みずほ銀行の開発は、最初に設計書を全部作り、それ通りに開発をする「ウォーターフォール」的な考え方。私たちが良くやるゲーム開発で実施する手法は、ある程度設計書を作り、開発しながらアップデートを行う「アジャイル」的な考え方です。ある意味では、正反対の作り方をしていました。この開発手法の違いを埋めるために、両者の開発手法の良いところを両取りできる新しい手法が生まれたりもしました。

やはり、異業種のギャップを乗り越えるためには、担当する責任者同士のコミットメントが重要だと思います。地道に課題解決を行いながら、議論すべきところはお互い正直に意見を交わすことによって、都度是正することができ、正しい方向に持っていけると考えています。



■ サービス開発においてこだわったポイント

———『PochettePlus』を開発するうえでこだわったポイントを教えてください。

小原:『PochettePlus』はゲームではなく、あくまでも学習アプリだと考えて開発をしてきました。

これまでは、お小遣いをもらって・貯めて終わりになってしまっていたところを、このアプリを通して、「世の中には、お金をもらったら、それを増やす方法がある」ということを、子どもたちに学んでほしいと思っています。

アプリでは、社会情勢や経済状況などの時世に合わせて、ゲーム上で物価や仕入れ値が変動するイベントを発生させています。子どもたちが、世の中の出来事に関心を持ったり、考えたりするきっかけを作ることが大切だと考えたからです。

最終的には、『PochettePlus』で遊ぶことにより、社会情勢や経済事情などに興味を持ち、お金を運用できる大人になってほしいと思っています。


伊藤:設計の部分でいうと、子どもたちが「やりたい!」と思えるように、大きく2つの仕掛けを作りました。

まず1つ目は、「子どもにとってのメリットが明確であること」です。
子どもは、自分のためにならないことは基本的にやりません。だからこそ、「お手伝いをして、お小遣いを稼ぎ、それを運用して増やせるかもしれない」という体験を設計しました。これは、子どもにとって非常にわかりやすい“得”の感覚であり、自然とアプリに向かう動機になります。


2つ目は、「世界観とストーリーの作り込み」です。
ただの“お金のシミュレーション”ではなく、なぜこの街を作るのか、なぜこのキャラクターたちが存在するのかといった背景に、しっかりとしたストーリーを用意しています。実際には公開していませんが、開発チーム内では詳細な設定があり、子どもたちがその世界に没入できるようにしています。


これらの仕掛けを通して、子どもたちが自然にアプリを開き、没入できる体験を作ることが、継続的な学びにつながると考えています。このような情緒的な没入体験こそが、ゲーム会社として提供できる最大の価値だと思っています。



■ サービスの精度を上げるためにユーザーの声を反映

———『PochettePlus』では、小学生との共同開発を行ったと伺いました。具体的にはどのようなことに影響しているのでしょうか?

小原:2024年の1年間、湘南白百合学園小学校・山梨学院小学校で実施したお金の学びの授業を通して、子どもたちにも開発に携わってもらいました。その中で、子どもたちに意見を聞いた時に、「いっぱい登場するキャラクターがいたほうが良い」という意見が多く出てきて、そのアイデアを反映させました。

伊藤:1キャラだけにするという選択肢もありましたが、子どもの多様性を考えた時に、自分の推しができるほどの選択肢がある方がいいと考え、多くのキャラクターを登場させています。この規模のアプリにしては、相当な数のキャラクターがいると思います。

また、UIについても、共同開発の中で子どもたちが体験している反応をみて工夫をしています。一般的なデジタルサービスでは避けられがちな“ごちゃごちゃ感”を、あえて演出として取り入れています。
子どもたちは情報が多い方が「これ何?」「あれも見たい!」とワクワクするのです。大人から見ると「情報量が多い」と感じるかもしれませんが、子どもにとってはそれが“面白さ”につながっていると感じています。



———2024年10月に実施したテスト運用の際には、どのような気づきがあったのでしょうか?

小原:このテスト運用では、約300世帯の親子に参加していただきました。その中で、子どもたちがすごく楽しんでくれたという手応えも感じることができました。テスト運用後に実施したアンケートでは、体験した親御さまから、子どもに金融や経済について学んでほしいという想いや願いなど、数多くのコメントが寄せられ、ニーズの高さを実感しました。

伊藤:テスト運用後には、ユーザー登録の部分を大幅にアップデートしました。元々親御さまの端末で子どもと一緒に遊ぶ仕様だったのですが、実際には子どもが自分の端末を使いたいとか、親と別々でやりたいとか、多様なケースに対応する必要がありました。端末が違っても同じアカウントで使えるようにしたり、家族で共用タブレットを使うケースがあったりと多岐にわたり、かなり大変な作業になりました。

また、一部からは「分かりにくい」というフィードバックもあったため、サービス開始が近づき時間がない中でも、キャラクターの言葉やチュートリアルを全部見直しました。

継続率は比較的よく、テスト運用においても、夢中になってくれているケースも多く見られました。そのため、最終的には、むしろお店のバリエーションを増やすなど、グレードアップさせるために時間を使うこともできました。



■ サービスの手応えと、今後の展望

———2025年4月にサービスローンチを迎えましたが、その後の手応えはいかがでしょうか?

小原:実際にアプリを使用した方には「子どもたちが自然にお手伝いをするようになった」、「ニュース番組に興味を持つようになった」というような声をいただいています。お金の知識や知恵をお子さまにこれほどまでに身に付けさせたかったのかと、親御さまのその熱量が我々の想像以上で大変驚きました。このような反応を通して、「やはりこの取り組みは間違っていないのだな」と確信しました。

伊藤:当初は、経営ゲームにおいて1日3回程度のプレイ(お店の開店)を想定していたのですが、リリース後の反応を見ると、子どもたちはもっと遊びたがっていることがわかりました。僕らとしては、アプリをずっとやり続けてほしいというよりも、親子のコミュニケーションのきっかけになればいいと思っていました。でも、実際には親子で一緒に楽しんでいる様子が見えてきたので、ユーザーのプレイのし方やプレイしやすさに応じて今後も検討・改善していきたいと思います。

小原:先日(サービスローンチ後)、佐賀県の小学校でこのアプリを使った授業を実施したのですが、子どもたちは大盛り上がりでした。とにかく制御が大変なくらい(笑)。
すごいのは、たった1時間の授業で「仕入れ→値付け→販売→利益」という一連の流れを、子どもたちが一発で理解してしまったことです。しかも、「安くすれば売れる」という単純な話ではなくて、住民が納得して買ってくれる価格にしなくてはならないし、運営しているお店(ポシェットマート)としても利益を出す必要がある。さらに、「どのお店が今安いか?」を物価ボタンで確認して、安く仕入れて高く売るという“価格差”の概念まで、自然と理解していました。



———ゲームという手段を選んだことについて、今振り返ってどのように感じていますか?

小原:「楽しい」という要素を軸にしたのは間違っていなかったと思います。また、「金融経済教育」も一時ではなく、継続することが重要だと考えています。それを実現するのが「楽しい」という原動力なのだと… もしここがブレていたら、きっと大失敗していたと思います。

もう一つ気づいたのは、親の反応です。ゲームだと思われると「やめなさい」と子どもは言われがちですが、「ポシェットプラス」は“学び”として親は認識しているので、むしろ「やりなさい」と応援することが多いですね。



———さいごに、今後の展望を教えてください。

小原:昨年1年間子どもたちと取り組んで、1年後のリテラシーの変化がすごくて驚きました。子どもは、本当に吸収が早いのだなと実感しました。これ(PochettePlus)は、ゲームではなく学びのツールなので、感覚を身につけるには時間をかけて繰り返し取り組むことが大切です。その際、親のサポートが非常に重要で、親子で一緒に楽しみながら続けてもらえたらと思います。1年後には、子どもたちが為替やニュース、物価の背景などに興味を持つようになるはずです。

私たちのミッションは、無料で使える部分も活用して、より多くの親子に知ってもらい、全国に広めていくことだと考えています。



■ まとめ


今回の取材を通して改めて感じたのは、異なる強みを持つ企業が手を組むことで、ひとつのサービスに込められる価値が何倍にも広がるということでした。

みずほフィナンシャルグループが持つ金融経済への深い知見と、セガ エックスディーが培ってきたゲーミフィケーションのノウハウ。この異業種の掛け合わせがあったからこそ、「学びたい」ではなく「やってみたい」から始まる、子どもたちにとって自然で楽しい金融経済教育のかたちが生まれたのだと感じました。

ゲーミフィケーションは、今回ご紹介した「金融経済教育」のように、重要度は高いが緊急度が低く、従来のアプローチでは届きにくかった領域でこそ、真価を発揮します。

本記事を通じて、新たな価値創出や社会課題の解決を模索されている皆様にとって、「こうしたアプローチもあるのか」と少しでもヒントとなれば幸いです。




■ 関連リンク


・『PochettePlus』プレスリリース

 https://segaxd.co.jp/news/newsrelease/c898eb4e41cf4a70a370234a80c3b321ab8edcfe.html
・【ムービー】『PochettePlus』開発の軌跡
 https://www.mizuho-fg.co.jp/journal/articles/pochetteplus/index.html
・『PochettePlus』アプリダウンロード
 - App Store : https://app.adjust.com/1oqcf8v7
 - Google Play : https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.mizuhopochette.okanenookeiko


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文責:マーケティング・コミュニケーション課

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