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【Conference Report 2】「使いたくなる」ゲーミフィケーションの構造とは? 実践者たちが語る仕組みと効果

文責:マーケティング・コミュニケーション課

ゲーミフィケーションの本質は「ゲームが持つ人を夢中にさせる力を活用すること」であり、「使いたくなる」体験をつくることそのものとも言い換えることができます。ゲーム以外のあらゆるサービスにおいても、使いたくなる体験を活かすことができるのです。では、その「使いたくなる」体験は、どのように作っていけばいいのでしょうか?

2025年11月に開催された「ゲーミフィケーション カンファレンス QUEST」では、ゲーミフィケーションの構造や仕組みについて、ビジネスの現場で実際にゲーミフィケーションを活用するキーパーソンが、パネルディスカッション形式で意見を交わしました。

※2025年に開催した『ゲーミフィケーション カンファレンス QUEST』の様子はこちらよりご参照ください


【登壇者】
 ・株式会社ベネッセコーポレーション 高校生プロダクト開発部 部長 石田 洋輔氏
 ・Digital Entertainment Asset Pte. Ltd. Founder & Co-CEO 山田 耕三氏
 ・面白法人カヤック ゲームフルチーム・リードディレクター 後藤 裕之氏
 ・株式会社セガ エックスディー 取締役 執行役員COO 伊藤 真人

■ ゲーミフィケーションが求められている市場背景


ベネッセコーポレーションの石田氏は、同社でプロダクトマネージャーとして学習アプリの開発に携わってきました。コロナ禍で学生が勉強から遠ざかったことを契機に、「ゲームしながら勉強できる」をコンセプトに新規事業を立ち上げ、セガ エックスディーとともに英語攻略リズムゲーム『Risdom(リズダム)』を開発・サービス化しました。

面白法人カヤックの後藤氏は、もともとバンダイナムコでゲームプランナーを務めていました。携わった『もじぴったん』というゲームが子どもの言葉の学習に役立ったという話を聞いて、「ゲームで楽しませよう」という思いが誰かの人生や社会の役に立つことに気づき、現在は面白法人カヤックでゲーミフィケーションの専門チームを作って活動しています。

山田氏の創業したDigital Entertainment Asset(DEA)は大企業とともに課題解決ゲームを制作するスタートアップ企業。山田氏は、もともとテレビ東京でバラエティ番組などを制作していましたが、2018年にDEA社を創業し、日本発のゲーミフィケーションを盛り上げるべく活動しています。


3名とのディスカッションを始める前に、セガ エックスディーの伊藤が、現在ゲーミフィケーションがビジネスシーンで求められる市場背景を説明しました。


「現代において、安さや利便性といった機能的価値はコモディティ化していて、それだけでは競争力が保てません。情報も飽和し、生成AIの登場によってさらに差をつけるのが難しくなっています。そうなると、感情などの人間の本質的な部分で勝負するしかありません」(伊藤)


例えば、ビジネスの現場でDXツールを導入しても使われないという課題に対して、ゲーミフィケーションは役立ちます。伊藤は「ゲームが持つ“人を動かし、夢中にする力”をゲーム以外にも転用する」のがゲーミフィケーションだと、このセッションにおける定義を共有しました。



■ ゲーミフィケーションの体験のコア(原理)とは


最初のトークテーマは「体験のコア(原理)」について。それぞれが携わってきたゲーミフィケーションの事例をもとに、人が夢中になる体験のコアは何か、話し合いました。

石田氏は、英語攻略リズムゲーム『リズダム』を作るにあたって、学生がゲームに使う時間が多いことに着目し、「なぜ子どもたちがそれだけゲームに時間をかけるのか?」という体験の原理をひも解きました。


「スマホのソーシャルゲームは(キャラクターを)強くするために『課金』のシステムがありますが、中高生は課金するお金がないので時間をかけてやりこむことになります。そこでリズダムでは、『課金』の代わりに『勉強』することで時間を短縮できる『勉強課金』のような仕組みをコアにしました」(石田氏)


学習アプリならではの工夫点について、石田氏はさらに言及しました。

まず、学習は成果を得られるまでに時間がかかり、成長実感が湧かずにユーザーが離脱しやすいという課題があります。これに対し、本アプリでは「キャラクターの育成」といった形で細かい成長を見える化することで、ユーザーが手応えを得られるまでの代替的なフィードバックとしています。

また、英語学習において重要な「繰り返し」の要素と、2〜3分のセッションを何度も反復するリズムゲームの相性の良さにも着目しました。

伊藤から「繰り返して、毎回同じ報酬だと飽きるのではないか」という問いかけに対し、石田氏は「短時間で解けるとちょっとポイントが上がる」といった、目標を徐々に引き上げていく設計が、継続的なモチベーション維持に重要だと述べました。


これに対し、面白法人カヤックの後藤氏は、夢中になる体験のコアには「自分ごと化」があると言います。

その例として、面白法人カヤックが手がけてきたものから『水門アクアリウム』というゲームが紹介されました。街を歩いて水門の写真を撮ると、ゲーム内で魚をコレクションでき水族館を作れるゲームですが、実はユーザーから集まった水門の写真は、異常がないかチェックするインフラ管理に役立てられるそうです。「面白そうなゲームだと思って始めたことが社会貢献に直結している。リアルの世界に貢献できることが、本質的に強い体験」だと説明しました。

他にも、同社が手がけたサイバーセキュリティを学べるクイズアプリでは、『攻殻機動隊 SAC_2045』の世界観に没入できるようになっているそうです。「公安9課の新米調査員」という作品とリンクした役割を与えられることで、自分ごと化が進み、使いたくなる体験になるのです。


一方、DEAの山田氏は、「報酬設定」の重要性を語りました。

DEAが東京電力と開発したアプリ『PicTrée(ピクトレ)』は、電柱の写真を撮影することでチームの陣地が広がる「陣取り合戦」のゲームですが、その報酬はお金に変換できる「ポイント」です。ゲームのジャンルによっても好き嫌いが分かれる中で、世代や好みを問わず誰もがほしいと思える報酬を設定したと言います。

もちろん、『ピクトレ』が多くのユーザー数を集めているのはお金という報酬だけが要因ではありません。「チーム戦」という陣取り合戦の性質上、人とのつながりやチームへの貢献実感もユーザーを動かす要素です。また、自分が見つけた電柱の不具合がその後きれいに整備された様子を見ると、社会貢献の実感を得られることもユーザーを惹きつけています。



■ ゲーミフィケーションの効果


ゲーミフィケーションを取り入れたい企業にとって、気になるのはその「効果」でしょう。各社はゲーミフィケーションの効果をどのように測っているのでしょうか。

英語攻略リズムゲーム『リズダム』には、ユーザーの保護者から「ゲームばかりで英語の学習をしないのでは」という心配の声が寄せられていましたが、実際の結果を見ると「ゲームに熱中した人ほど英語学習にも熱中している」ということがわかりました。


こういった「ゲームをするほど学習もはかどる」という法則から、ベネッセコーポレーションでは、理想の体験サイクルをまわすことをKPIとしています。

「まずはリズムゲームにどれくらい夢中になってくれたか。その上で英語の問題をどれくらい解いてくれたか、といった学習量と継続に着目しています。理想のサイクルを回すために必要なステップをKPIとして立てています」(石田氏)


一方で、山田氏の手がける『ピクトレ』では、電柱をはじめとするインフラの点検コスト・人件費を半分にすることを目標に運営しています。

現在は電力会社から発注のあったエリアでしかゲームがプレイできないという制約があるため、KPIの設計は「発注金額の中で効率的にデータ(ユーザーが撮影する写真)を集めること」が第一となっているそうです。ユーザーが持続的にプレイできるように、今後はKPIの設計も変化していく可能性があるとも言及しました。


後藤氏は、ゲーミフィケーションの効果には「量的な効果」と「質的な効果」があると説明しました。

「その人のモチベーションがどう変わったか」という質的な変化は数値化しづらく見えにくいものの、「継続率を上げたい」という課題に対してゲーミフィケーションを取り入れたケースでは、実際に継続率の向上が量的に捉えられたと言います。



■ ゲーミフィケーションをどうやって実現していくのか


続いて、ゲーミフィケーションを取り入れ、実践していくために各社がどのようなプロセスを踏んでいるのか、アイデア整理や開発の過程について紹介されました。


ベネッセコーポレーションでは、プロトタイプ・アルファ版・ベータ版とバージョンを重ねてユーザーに細かく試してもらうことを大事にしています。そのなかでも、石田氏は「ユーザーにリアルの場に来てもらい、目の前で使ってもらってフィードバックをもらう顧客調査が特によかった」と話しました。

これには後藤氏も「適切な方向に開発を進めるために、将来のユーザーになる人に逐一テストプレイしてもらうことが大事です」と同意。

さらに、ベネッセコーポレーションではマーケティングについても興味深い取り組みを行っています。それは、ユーザー層である中高生5000人を「開発室」というLINEのオープンチャンネルに集めてオープンに開発していることです。

「中高生が実際にプレイしてアイデアやフィードバックをくれます。デザインに迷ってオープンチャットで聞くと、いろいろな子が意見を送ってくれます。参加している子たちの名前をゲームのスタッフロールに載せているのでリリースした時に『自分の作ったアプリ』としてSNSなどでつぶやいてくれました」(石田氏)

これは、ゲーミフィケーションにおいて鍵となる「自分ごと化」をプロモーションにも活用しているとも言えます。これにより、『リズダム』は大がかりなプロモーションを実施せずとも、内側のファンからじわじわと認知が広がっているそうです。

また、後藤氏が企画を考えるときは、一旦アイデアを発散させて考えると言います。

そこからアイデアを一つに絞るときは「自分のパーソナルな部分を一回捨てて、僕が全世界の平均的な人間だと思い込んだときに『これだ』と思えるもの」で判断するそう。ゲームクリエイター出身の後藤氏は、「自分が面白いと感じたアイデアでなければ、ゲームを面白くすることもできない」と持論を語りました。

最後に山田氏は、「やっぱり現実を動かすのが面白い」と話し、リアルな世界と接続したゲーミフィケーションの設計を提案しました。


「従来のゲームは基本的にフィクションの世界に閉じていましたが、これからの時代はゲームのインターフェースを通して現実をどう改変するか、どう現実に影響を与えていくかがテーマになっていくと思います。『本当に現実を変えられた』というフィードバックが、ユーザーにさらにやる気を出させると思います」(山田)

ゲーミフィケーションの領域において、豊富な実践事例を持つキーパーソンたちからリアルな知見が共有され、有意義なセッションになりました。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
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